空-Q-所為

在の実践

ZF 集合論上での基数についての基本的性質 (2)

記事の趣旨

本記事は前回の記事の続編である。連続体濃度  \mathfrak{c} と最小の非可算基数  \aleph_1 との関係について論ずる。

注意

この記事においては、基本的に ZF 公理系を採用する。またこの記事は Loren J. Halbeisen "Combinatorial Set Theory - With a Gentle Introduction to Forcing" の 4 章を大きく参考にしている。

準備

定義 1 基数  \kappa, \lambda について、 \kappa \leq^* \lambda とは、 \lambda から  \kappa への全射が存在することをいう。

補題基数  \kappa,\lambda について、 \kappa \leq \lambda ならば  \kappa \leq^* \lambda である。

証明 濃度  \kappa, \lambda を持つ集合  A, B を取ると、ある単射  f \colon A \to B が存在することがいえる。このとき  f の像に含まれる元については  f によって引き戻した元を、そうでない元については適当な  A の一点を充てる写像を考えると、これは  B から  A への全射となる。Q.E.D.

補題 3 基数  \kappa,\lambda について、 \kappa \leq^* \lambda ならば  2^\kappa \leq 2^\lambda である。

証明  f\colon B \to A なる全射について,  X \subset A に対して  f^{-1}(X) \subset B を充てる対応は単射となる。Q.E.D.

 \mathfrak{c} \aleph_1 の関係

補題順序数  \alpha \in \omega_1 について、集合  Q_\alpha \subset \mathbb{Q} \cap (0,1) であって  \alpha とのあいだに順序同型が存在するようなものをとれる。

証明  \alpha が有限の場合は明らかである。 \alpha が無限順序数の場合には、これは可算であるため  \alpha の元の列挙  \{\beta_i\}_{i \in \omega} がとれる。また、 \mathbb{Q} \cap (0,1) は可算無限であるため、列挙  \{q_i\}_{i \in \omega} がとれる。このとき、帰納的に  \beta_i の行き先を定めることで写像  f \colon \alpha \to \mathbb{Q} \cap (0,1) を構成する。

 \beta_0 の行き先として  q_0 を充てる。また、 \beta_n の行き先として、 i \lt n について  \beta_i \lt \beta_n f(\beta_i) \lt q_m が同値になるような最小の  m について  q_m を充てると、 f は目的の写像となる。 Q_\alpha としては  f の像をとればよい。Q.E.D.

定理 5  \aleph_1 \leq^* \mathfrak{c}.

証明  (0,1) は連続体濃度を持つため、 (0,1) から  \omega_1 への全射を構成すればよい。 r \in (0,1) についてその  2-進小数展開の小数点以下  n-桁目を  r_n と表記する。このとき  Q_r := \{q_n| r_{2n} = 1\} とすると、任意の  \alpha \in \omega_1 に対してある  r \in (0,1) であって  Q_r が順序型  \alpha を持つようなものが存在する。よって、 Q_r が整列順序付けられているときには  r に対して  Q_r の順序型を充て、そうでないときには適当な一点につぶす写像 (0,1) から  \omega_1 への全射となる。

系 6  2^{\aleph_1} \leq 2^\mathfrak{c}.

証明 定理 5 と補題 3 より従う.

命題 7 実数集合  \mathbb{R}可算集合の可算和として表せるならば、 \aleph_1 \not\leq \mathfrak{c} が成り立つ。

証明  \mathfrak{c}^\omega = \mathfrak{c} より、 ^\omega \mathbb{R}可算集合の族  \{F_n\} の合併で表されるとしてよい。ここで単射  j\colon \omega_1 \to \mathbb{R} があったとして矛盾を導く。

 G \colon \omega \to \mathcal{P}(\mathbb{R}) を次のようにとる:

  •  n \in \omega に対して  \bigcup_{f \in F_n}\mathrm{Range}(f) を充てる。

このとき、 n について  G(n)可算集合である。このとき、 h \colon \omega \to \mathbb{R} を次のようにとる:

  •  h(n) として、 j(\alpha) \notin G(n) をみたすような  \alpha \in \omega_1 であって最小のものに対して  j(\alpha) を充てる。

このとき、すべての  n \in \omega に対して  h \notin F_n が成り立つため、矛盾が導かれた。Q.E.D.

参考文献

  1. Loren J. Halbeisen, "Combinatorial Set Theory - With a Gentle Introduction to Forcing", 2012.