ZF 集合論上での基数についての基本的性質 (4)
記事の趣旨
本記事は前回の記事の続編である。本記事においてはふたつの結果を紹介する。
注意
この記事においては、基本的に ZF 公理系を採用する。またこの記事は Loren J. Halbeisen "Combinatorial Set Theory - With a Gentle Introduction to Forcing" の 4 章を大きく参考にしている。
定理 1 無限基数 について が成り立つ。
証明 明らかに である。以下これらが等しくならないことを示す。
濃度 を持つ集合 を任意に取る。このとき なる全単射がとれたとして矛盾を導く。
まず単射 を次のように構成する:
- に対して .
次に、無限順序数 に対して なる単射が構成できたとして単射を延長することを考える。 についてこれを以下 と表記する。
上に次のように同値関係を入れる:
- .
また と について と定める。さらに と定める。
ならば、明らかに任意の について が成り立つため、 が成り立つ。また逆に であるとして、一般性を失わずに、ある について、 かつ かつ について が成り立つようなものをとれる。このとき かつ が成り立つため、 が示される。よって が示された。
また、構成より明らかに は有限集合である。より、ZF 集合論上での基数についての基本的性質 (3) - 空-Q-所為 定理 5 の証明から なる標準的な単射を得ることができる。よって からある順序数 への全単射 を得ることができる。このとき、 に対して は有限個の -同値類の和で表されることに注意すると、 なる単射が得られる。ここから、Cantor-Bernstein の方法により標準的に全単射 なる全単射を得ることができる。
ここで写像 を次のように定める:
- に対し、 を充てる。
このとき とすると、 は の像には入らないことが示されるため、延長 を構成できる。超限帰納的に順序数全体のクラスから への単射が構成できることになってしまうが、これは矛盾である。Q.E.D.
定理 2 がある自然数 について成り立つとすると、 はある自然数 について が成り立つ。
証明 が有限ならば となりよい。 が のベキでないとして矛盾を導く。以下濃度 の集合 をとる。
なる全単射をとる。
まず、 なる単射をつくることを目標にする。 が と表示されるとする。次に まで の元であって相異なるものを選んだとする。このとき、 について とする。ここで が成り立つように同値関係を定め、 を同値類のいくつかの合併として表されるものの集合とする。このとき の濃度は のベキである。特に とは一致しない。従って、標準的な形で適切に定められた 上の順序のもとで とは異なる元 を選ぶことができる。このとき と表示されたなら、 は とは異なる元である。よって なる単射を構成できた。
次に、無限順序数 に対して なる単射が構成できたとして単射を延長することを考える。 についてこれを以下 と表記する。
上に次のように同値関係を入れる:
- .
また と について と定める。さらに と定める。
ならば、明らかに任意の について が成り立つため、 が成り立つ。また逆に であるとして、一般性を失わずに、ある について、 かつ かつ について が成り立つようなものをとれる。このとき かつ が成り立つため、 が示される。よって が示された。
また、構成より明らかに は有限集合である。より、ZF 集合論上での基数についての基本的性質 (3) - 空-Q-所為 定理 5 の証明から なる標準的な単射を得ることができる。よって からある順序数 への全単射 を得ることができる。このとき、 に対して は有限個の -同値類の和で表されることに注意すると、 なる単射が得られる。ここから、Cantor-Bernstein の方法により標準的に全単射 なる全単射を得ることができる。さらに Cantor 標準形に遡ればこれを なる同型に標準的に変形できる。
ここで写像 を次のように定める:
- に対し、 を充てる。
このとき とすると、 が とおくと は の像には入らないことが示されるため、延長 を構成できる。超限帰納的に順序数全体のクラスから への単射が構成できることになってしまうが、これは矛盾である。Q.E.D.
参考文献
- Loren J. Halbeisen, "Combinatorial Set Theory - With a Gentle Introduction to Forcing", 2012.
- Halbeisen, Lorenz, and Saharon Shelah. “Consequences of Arithmetic for Set Theory.” The Journal of Symbolic Logic, vol. 59, no. 1, Association for Symbolic Logic, 1994, pp. 30–40, https://doi.org/10.2307/2275247 .